AISASモデルとは
AISASモデルとは、株式会社電通が提唱した「インターネット普及時代におけるユーザーの購買行動モデル」のひとつです。
購買行動モデルとは、消費者が商品を購入するまでの一連のプロセスを体系化したものを指します。
ASIASモデルは、別名「AISAS理論」や「AISASの法則」と呼ばれることもあります。
AISASモデルは、まだインターネットが普及していない1920年代に米国のサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された「AIDMA」という購買行動モデルが元になっています。
AIDMAの購買プロセスでは、次の5つの行動プロセスで形成されています。
・Attention:認知・注意
・Interest:興味を持つ
・Desire:欲求
・Memory:記憶
・Action:購買行動
まずユーザーは商品について認知し、興味・関心を示す。その後、実際にその商品への欲求を感じることで商品を記憶し、購入するというプロセスで構成されています。
しかし、インターネットの普及により、消費者の購買に対する態度や心理は大きく変化しました。
そういった背景を受けて新しく登場したのがAISASモデルであり、次の5つの行動プロセスで構成されています。
・Attention:認知・注意
・Interes:興味・関心
・Search:検索
・Action:購買
・Share:共有
それでは、5段階の行動プロセスについて詳しくみていきましょう。
AISASモデルの五段階構造
- ・Attention(認知・注意)
ユーザーは、まず最初にテレビCMや雑誌、インターネットで広告などを見て商品やサービスについて認知(Attention)するところから始まります。 - ・Interest(興味・関心)
そして次に、認知した商品やサービスの「売り」に対してユーザーは興味・関心(Insterest)を示します。ここまでは、インターネットが普及する前のAIDMAモデルの「AI」の部分と同様といえるでしょう。 - ・Search(検索)
商品やサービスに興味・関心(Insterest)を示したユーザーは、そのまま購入に至るのではなくインターネット上で情報収拾を行います。商品やサービスの詳細情報や口コミを見ることで、本当にそれが自分にとって「良いもの」なのかを判断するためです。 - ・Action(購買)
情報収集を行った結果、商品の良さを感じてもらえた場合は購買に至ります。 - ・Share(共有)
購買で終わりではなく、商品やサービスを使った感想、体験をブログやSNSなどに共有(Share)します。もちろん、商品やサービスの良い点だけでなく、悪い点や不足している点も共有される場合があります。
AISASの特徴
AISASの主な特徴は大きく以下の2点です。
- ① インターネットで情報収集をして購買に至るまでの意思決定を行う。
- ② 購入した商品についての評価や感想、体験をインターネット上でシェアする。
インターネットの普及によって生じた「検索」と「共有」というプロセスを組み込んだことが、AISASモデルの特性です。
昨今ではユーザーによって共有された評価や口コミといった情報が第三者の購買行動プロセスにおける「認知・注意」や「興味・関心」、「検索」を喚起させる役割を担っています。
また、実物を手に取らなくても、インターネットの検索によって得た情報だけが購入の決め手になるなど、ユーザーの購買行動は日々進化していると言えるでしょう。
AISASモデルの変化
Dual AISASモデルの登場
従来のAISASモデルでは、ユーザーの興味・関心(Interest)は購買に関する興味関心だけだと考えられていました。しかし実際は、ユーザーの興味・関心(Interest)は「コミュニケーションへの興味・関心」と、「購買への興味・関心」に分けられます。
そこで登場したのがDual AISASモデルです。
Dual AISASモデルでは、ユーザーのSNSやコミュニケーションアプリでの行動プロセスまでも捉えており、ユーザーの購買行動を従来のAISASモデルより正確に把握できるようになります。
前述した通り、Dual AISASモデルでは「興味・関心(Interest)」段階にあるユーザーを「コミュニケーション関心層」と「購買関心層」に分けて考えます。
「コミュニケーション関心層」呼ばれるユーザーたちは、商品やサービスそのものに興味があるわけではありません。面白いコンテンツを通じた「面白い、笑える、友達にも見せたい」といったコミュニケーションに興味があるのです。つまり、「拡散・共有はするけれど、購入にはいたらない層」であると言えます。
一方、「購買関心層」は従来のAISASモデルの通り、商品やサービス自体に興味・関心を持っており、購入を検討している層を指します。
このようにユーザーの購買行動を細分化して考えることで、AISASモデルではカバーしきれなかった部分を補完することができ、企業は効果的に商品やサービスをユーザーに届けることが可能になります。
AISASモデルの活用事例
①スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは、 AISASモデルの中でもとくに「Share(共有)」に力を入れることにより、広告費をかけずとも多くの人に認知してもらえる状況を作り出しています。
- ・Attention(認知・注意)
写真映えする商品、コーヒーカップに書かれるメッセージ、といった演出で、ユーザーのShare(共有)を促進。広告費をかけずともユーザー間で認知を増やすことに成功している。 - ・Interest(興味)
次々と季節限定の新商品を発売することで、ユーザーに飽きさせない仕組みを構築。
スターバックスのユーザー層はリピーターも多いため、新作を出すだけでも十分に興味を惹きつけることが可能です。 - ・Search(検索)
スターバックスがターゲットとしている若年層は、SNSで検索をする人が多いです。
そのため、おしゃれなブランディングによってSNSでシェアされやすい状況と非常にマッチしています。 - ・Action(購買)
商品そのものの魅力だけではなく、居心地の良い空間を提供することで購買を。駅前店などではカフェで仕事がしたい人に対して、店内に電源やWi-Fiを完備。
さまざまなユーザーが利用しやすいように工夫を施している。 - ・Share(情報共有)
SNSで共有してくれやすい若年層の女性に対し、非日常的な雰囲気を演出することで、自社をおしゃれなカフェとしてブランディング。前述したように商品自体も非常に見栄えが良く、シェアしたくなるような工夫が施されています。
②RIZAP
RIZAPは、 AISASモデルの中でもとくに「Interest(興味・関心)」に力を入れることにより、短期間の間にかなり世の中にインパクトを与えることができています。
- ・Attention(認知・注意)
耳に残りやすい音楽を使ったテレビCMを集中的に流すことによって、「RIZAPのCMを知らない」という人がいないほどに、多くの人に認知することができています。 - ・Interest(興味・関心)
著名人の起用、ビフォーアフターの映像、そして「2ヶ月でこの体」「結果にコミットする」というわかりやすいコピーで、ユーザーの興味・関心を惹くことに成功しています。 - ・Search(検索)
RIZAPは、CMによって興味を持ったお客さんを購入にスムーズに誘導するため、充実したHP設計をしています。さらに、自社のHP以外からも情報を得ようとしたお客さんに対してアフィリエイターを使い、「RIZAP 悪評」や「RIZAP 不満」などのネガティブなワードで検索しても、ポジティブな内容が出るようにしていました。 - ・Action(購買)
2ヶ月で29万8,000円という高額な料金設定。ここでユーザーの背中を押したのは、「30日間の全額返金保証制度」。もし不満があれば、料金が返ってくるという条件は購入へのハードルをかなり下げることができています。 - ・Share(共有)
SNSやブログへの「Share(共有)」も効果的ですが、強力な「Share(共有)」の後押しになるのは、RIZAPを体験したユーザー自身です。目に見える変化は、周囲の人への強烈な広告になり得ます。短期間で理想の体を手にしている知人を見て、RIZAPに興味を持った方もいることでしょう。
③メルペイ
メルペイが会員登録増加施策として行った「すすメルペイキャンペーン」では、 AISASモデルの中でもとくに「Share(共有)」に力を入れることにより、ユーザーを巻き込んだ大規模な拡散を実現しています。
- ・Attention(認知・注意)
動画広告をテレビCMとSNS両方で行うことで、広範囲での認知を拡大しています。 - ・Interest(興味・関心)
ターゲット世代にとって興味・関心の高い人気のYouTuberを動画広告に起用することで、Interest(興味・関心)にうまく繋がるように設計しています。 - ・Search(検索)、Share(共有)
このキャンペーンに参加したユーザーは、招待コードをTwitterなどでつぶやくことになるので、自身のフォロワーに拡散を行う仕組みになっています。このように、AISASでいう「Share(共有)」をうまく活用し、SNSでの拡散を誘発しています。
まとめ
マスメディア時代にはAIDMAモデルが、インターネット時代に突入するとAISASやDual AISASというモデルが出てきたように、ユーザーの購買行動は、時代の変化と共に変わるものです。
特に、マーケティング業界は新しいモデルが次々に出てきます。ユーザーの購買行動にあった適切なマーケティング施策を講じるためには、常に最新の情報を手にすることが大切になってきます。